大学の組織教室にゆかりのある皆様で結成した「たつのま会」の写真 薬理学教室は、初代の山本巌教授以降、二代目黒河内寛教授、三代目中嶋敏勝教授の後を受け、平成17年2月から吉栖が四代目として教室を担当しております。現在のスタッフは、教授以下、中平毅一准教授、京谷陽司助教、趙晶助教、河村美紀子秘書の5名です。 教育については、薬理学は他の多くの基礎?臨床分野とも深く関連しますので力を注いで行なっています。薬理学の講義は病態生理からみた薬理学的メカニズムに重点をおいて教育しており、薬理学実習ではシミュレーターなどを用いてより臨床的な臨場感のあるものを取り入れています。その他、申博_申博手机版-平台官网での基礎薬理学?臨床薬理学の講義も各教員が分担して行なっています。 研究では、吉栖が高血圧や動脈硬化などの心血管病における酸化ストレスの関与と細胞内情報伝達機構の役割について研究を行ってきました。中平准教授は敗血症などの重症感染症におけるミトコンドリアDNAの役割について研究し、COVID-19患者の重症度と血清ミトコンドリア 本講座は1947年に開講された衛生学講座に始まります。車谷典男前教授の任期中(2006年)に地域健康医学講座と改称され、2016年に疫学?予防医学講座となりました。講座名の英語表記はDepartment of Epidemiologyです。学部教育では第3学年(基礎医学Ⅰ)の衛生学?公衆衛生学Ⅰを担当しており、疫学を中心として産業衛生、環境衛生、EBM(Evidence Based Medicine)などの領域を教育しています。また大学院の修士および博士課程においても疫学分野の研究を指導しています。 本講座では、約3000人の奈良県一般住民を対象とした住環境の温度?光?騒音環境の健康影響に着目した前向きコホート研究を行っています。わが国では総死亡数の約1割が外気温低下による寒冷曝露と関連しており、冬の循環器疾患や入浴事故の増加は重要な公衆衛生課題です。生活環境の光曝露は、外部環境と生体リズムを同調させる重要なシグナルです。時計遺伝子が制御する生体リズムは、睡眠、内分泌?代謝、循環、精神、免疫機能などに関与しており、不適切な光曝露によるDNAレベルが相関することを明らかにしました。京谷助教は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群における血管平滑筋細胞増殖のメカニズムの一端を明らかにし、最近では大規模データベースを用いた情報科学の薬理学研究を行っています。趙助教は、動脈解離発症におけるオートファジーの関与について研究を行っています。まだまだ実験結果がすぐ創薬に結びつく段階ではありませんが、各スタッフが成果を出せるように努力しています。 今後の抱負として、酸化ストレスによる心血管系細胞障害の分子機構の研究を、分子創薬を目指したトランスレーショナルリサーチに発展させていきたいと考えています。また教育面では、医学生への臨床薬理学教育の充実が求められており、臨床に即した薬物治療に重点をおいた教育を行なっていきたいと考えています。現在も数名の学生が研究室に出入りしており、彼らの中から将来の基礎医学研究者が生まれることを期待しています。今後も教室員一同、奈良県立医科大学での研究ならびに教育の発展に努力していく所存です。HPhttps://epi.naramed-u.ac.jp/外部環境と生体リズムの不一致は、さまざまな健康問題を生じる可能性を示唆されています。鉄道?空港?道路からの騒音は、睡眠障害や循環器疾患との関連が指摘されてきましたが、室内で暮らす住民に届いた騒音が、どの程度の健康影響と関連するかは明らかではありません。2010年に開始したコホート研究から、夜間の光曝露が多いほど、生体リズムのひとつの指標であるメラトニン分泌量が減少し、肥満やうつ症状の発症リスクが上昇することや、室温低下により血圧モーニングサージが高いこと、皮膚温低下と血圧上昇の関連、寝室内騒音と睡眠の質の関連など、新規性の高い研究成果を発表してきました。 疫学?予防医学講座では研究成果から、疾病予防のために理想的な室内環境を提案し、健康増進や疾病予防に寄与することをめざしています。日常生活の環境因子や生活習慣の健康影響に関する研究に興味のある方は是非お立ち寄りください。27医学科:基礎医学教育 薬理学教授/吉栖 正典医学科:基礎医学教育 疫学?予防医学教授/佐伯 圭吾
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